活動量分析の実践|輪切り・追いかけ・面積で営業を可視化する
営業の活動量分析手法を解説。輪切り分析・追いかけ分析・面積分析の3つのフレームワークで、営業活動を数値化し改善ポイントを特定する方法を紹介します。
渡邊悠介
活動量分析は「もっと頑張れ」ではなく「どこを直すか」を明らかにする
結論から言えば、活動量分析の目的は「量を増やせ」と叱ることではありません。「どこに量の問題があり、どこに質の問題があるか」をデータで切り分けて、最もインパクトの大きい改善ポイントを特定することです。 正しい活動量分析は、営業パーソンの努力を成果に変換する精度を大きく高めます。
活動量分析には3つのアプローチがあります。ファネルの各段階を横に切って分析する「輪切り分析」、特定の案件群を時系列で追う「追いかけ分析」、行動の総量を面積として捉える「面積分析」です。この3つを組み合わせることで、営業活動の全体像が立体的に見えてきます。
輪切り分析——ファネルのボトルネックを特定する
輪切り分析とは
営業ファネルの各ステップを横方向に「輪切り」にして、各ステップの件数と移行率を可視化する分析手法です。
リスト(200件)
↓ コンタクト率 40%
コンタクト(80件)
↓ 商談化率 15%
商談(12件)
↓ 提案率 75%
提案(9件)
↓ 受注率 33%
受注(3件)
分析のポイント
各ステップの移行率を月次で追って、過去の実績や業界平均と比較します。移行率が特に低いステップが「ボトルネック」です。そこが改善の優先度が最も高い箇所になります。
例えば、コンタクト→商談化の移行率が15%→8%に落ちている場合、以下の原因が考えられます。
原因を特定するために、さらに細かく切り分けて分析します。
追いかけ分析——案件の進捗を時系列で追う
追いかけ分析とは
特定の月に発生した案件群を、その後の進捗に沿って時系列で追跡する分析手法です。
例えば、「4月に商談化した案件12件のうち、5月末時点で何件が提案まで進み、何件が受注して、何件が脱落したか」を追跡します。
分析のポイント
案件の滞留期間を可視化する:各ステップでの平均滞留日数を出します。「ヒアリング→提案」に平均14日かかっているなら、この14日を10日に短縮する施策(手戻りをなくす段取り設計、提案書テンプレートの整備など)が有効です。
脱落ポイントを特定する:同じ時期に発生した案件群の中で、最も脱落が多いステップを特定します。商談化したのに提案まで進まない案件が多い場合は、ヒアリングの質に問題がある可能性が高いです。
時間経過による受注率の変化を把握する:商談から30日以内に受注した案件と60日以上かかった案件では、受注率に大きな差があるケースが多いです。「商談から45日を超えたら受注確率は半減する」といった気づきが得られれば、案件の優先順位づけの基準に反映できます。
面積分析——行動の総量を可視化する
面積分析とは
「接触した企業数 × 1企業あたりの接触回数」を面積として捉え、行動の総量を可視化する分析手法です。
同じ「月間100件の架電」でも、以下では意味がまったく異なります。
- パターンA:100社に1回ずつ架電(幅広く薄いアプローチ)
- パターンB:20社に5回ずつ架電(絞り込んで厚いアプローチ)
面積(企業数×接触回数)はどちらも100ですが、商談化率はパターンBのほうが圧倒的に高くなります。アプローチ回数の最適化で示した通り、複数回の接触が商談化には欠かせないからです。
面積分析の活用法
チーム全体の面積を比較する:メンバーごとの「面積」を計算して、成果が高いメンバーの面積の構成(幅と深さのバランス)を分析します。成果の良いメンバーのパターンをチーム全体に展開することで、組織的な改善ができます。
月次での面積トレンドを追う:月ごとに面積がどう変化しているかを追跡します。面積が縮小している場合は、社内業務の増加や営業活動以外のタスクに時間を取られている可能性があります。ECRSの4原則で非営業活動を圧縮する施策につなげます。
3つの分析を組み合わせた改善プロセス
ステップ1:輪切り分析でボトルネックを特定
月次で各ステップの移行率を確認して、最も改善インパクトが大きいボトルネックを特定します。
ステップ2:追いかけ分析で原因を深掘り
ボトルネックのステップで滞留している案件を、個別に追いかけ分析します。「なぜこの案件はヒアリング後に止まったのか」を具体的に調べます。
ステップ3:面積分析で量と質のバランスを確認
ボトルネックの原因が「量」にあるのか「質」にあるのかを、面積分析で判断します。面積(行動量)が十分にあるのに移行率が低い場合は「質」の問題、面積自体が不足している場合は「量」の問題です。
ステップ4:施策の実行と効果測定
特定した問題に対する施策を実行して、翌月の分析で効果を確かめます。施策の効果は「移行率の変化」で測定します。
活動量分析の注意点
データの正確性が前提
分析の精度は、データの入力精度に依存します。CRM・SFAへの活動記録が不正確・不完全であれば、分析結果も信頼できません。「記録しやすい仕組み」と「記録する文化」の両方を整えることが、活動量分析の大前提です。
量だけを追わない
活動量を可視化すると、「架電数を増やせ」「商談数を増やせ」という量の指示に走りがちです。しかし質を伴わない量の増加は、成果に結びつきません。量と質の両面を常にセットで分析してください。
個人攻撃に使わない
活動量分析の結果を「Aさんは架電数が少ない」と個人の叱責に使うと、データの入力率が下がり、分析自体が機能しなくなります。分析は「チームの改善」のために使い、個人の評価とは切り離してください。
まとめ:データが営業を科学に変える
活動量分析は、営業を「経験と勘」から「データと科学」に進化させるための基盤です。輪切り・追いかけ・面積の3つの視点で営業活動を可視化して、改善ポイントを特定して、施策を実行して、効果を検証する——このサイクルを回し続けることで、営業組織は確実に強くなります。営業計画とリソース配分の精度向上にも直結しますので、まずは今月のファネルデータを輪切りにすることから始めてみてください。
よくある質問
- Q活動量分析に必要なデータはどうやって集めますか?
- CRM・SFAの活動記録が基本のデータです。架電数、メール送信数、商談数、提案数、見積数をCRMに記録する習慣を徹底してください。記録の手間を減らすため、選択式の入力項目を活用して、1件あたりの入力時間を30秒以内に抑える工夫が重要です。CRMの入力率が80%を下回ると分析の信頼性が落ちるため、まずは入力の定着が最優先です。
- Q活動量を増やすべきか、質を上げるべきか、どう判断しますか?
- ファネルの各ステップの移行率(どれだけ次のステップに進むか)を確認してください。アプローチ→コンタクトの移行率が業界平均より低い場合は量の問題(リストの質やアプローチのタイミング)、コンタクト→商談化の移行率が低い場合は質の問題(トークスキルやヒアリング力)です。量と質のどちらに改善余地が大きいかをデータで判断して、効果の大きいほうに施策を打ちます。
- Q活動量分析をチームに定着させるコツは?
- 3つのポイントがあります。第一に、分析結果を個人の評価に直結させないこと。評価と紐づけると、データを盛る動機が生まれます。第二に、分析結果を全員に公開して、チーム全体の改善に使うこと。第三に、週次の短いミーティング(15分)で分析結果を共有して、改善アクションを1つだけ決めること。大がかりな分析会よりも、小さな改善の積み重ねのほうが定着します。
渡邊悠介
代表取締役 / 株式会社Hibito
株式会社Hibito代表取締役。営業組織コーチング・個人コーチングを通じて、営業パーソンの主体性と成果を最大化する専門家。営業企画×AIによる組織変革とコーチングによる個人の可能性開放を両輪で推進。「全ての人が自分の未来を自分の手で描ける社会」の実現をミッションに掲げる。
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