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プロダクト利用定着|顧客の日常業務にプロダクトを根付かせる方法

カスタマーサクセスのプロダクト利用定着を解説。導入後の利用率を高め、顧客の日常業務にプロダクトを不可欠な存在にするための戦略と実践法を紹介します。

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渡邊悠介


結論:プロダクト利用定着は「導入の成功」の後に来る最重要課題

結論から述べます。プロダクトの導入が完了しただけでは、CSの仕事の半分しか終わっていません。 導入後にプロダクトが顧客の日常業務に定着し、不可欠な存在になって初めて、顧客の成功とCS活動の成果が実現します。

オンボーディング(導入支援)で初期成功体験を得た顧客でも、その後の利用が定着しなければ、やがてプロダクトは使われなくなり、解約につながります。利用定着は、オンボーディングと契約更新をつなぐ最重要フェーズです。

本記事では、プロダクトの利用率を高め、顧客の業務に根付かせるための戦略と実践法を解説します。

利用定着の3段階モデル

段階1:初期利用(Activation:アクティベーション)

プロダクトを初めて使い、基本的な操作を覚える段階です。オンボーディングの延長であり、「使い方は分かったが、まだ日常的に使っている状態ではない」レベルです。

この段階の課題: 操作方法の理解不足、「前のやり方のほうが楽」という抵抗感

段階2:習慣化(Habit Formation:ハビット・フォーメーション)

プロダクトの利用が日々のルーティンに組み込まれる段階です。「毎朝出社したらまずこのツールを開く」「週報は必ずこのツールで作成する」といった習慣が形成されている状態です。

この段階の課題: 一部のメンバーしか使っていない、特定機能しか使っていない

段階3:不可欠化(Indispensability:インディスペンサビリティ)

「このプロダクトがなければ業務が回らない」と顧客が感じる段階です。プロダクトが業務インフラとして定着し、データの蓄積も進んでいるため、他社への乗り換えコストが高い状態です。

この段階の特徴: 高い継続率、拡大提案の受容性が高い

利用定着を阻害する3つの要因と対策

阻害要因1:業務プロセスへの組み込み不足

プロダクトを「追加のツール」として位置づけている限り、利用は定着しません。「既存の業務フローのどこに、どのように組み込むか」を明確に設計する必要があります。

対策: 顧客の既存業務フローをヒアリングし、プロダクトの利用を自然に組み込めるポイントを特定します。「毎週月曜の朝会で、このダッシュボードの数字を確認する」「商談後は必ずこのツールに記録する」など、具体的なルールを顧客と一緒に設計します。

阻害要因2:組織内の利用者偏在

一部の熱心なユーザーだけが使い、他のメンバーが使っていない状態です。特にマネージャーが使っていない場合、メンバーの利用動機が著しく低下します。

対策: マネージャーの利用を最優先で促進します。「マネージャーが毎週このレポートを確認し、メンバーにフィードバックする」というフローを設計することで、メンバーにとって「入力しなければマネージャーに見てもらえない」状態を作ります。他者を巻き込む力がここでも重要です。

阻害要因3:成功体験の不足

最初のFirst Value(初期成功体験)は体験したものの、その後の「次の成功体験」が生まれていない状態です。最初の感動は薄れやすく、継続的な成功体験がなければ利用のモチベーションは低下します。

対策: 顧客接点の中で、定期的に「次のマイルストーン(節目)」を設定し、新たな成功体験を一緒に作っていきます。「次は○○の機能を活用して、△△を実現しましょう」と、常に次のゴールを提示します。

利用定着を促進する5つの施策

施策1:利用データのモニタリング

利用データを日次・週次で確認し、利用率の変化を検知する仕組みを作ります。KPI設計と連動させ、「利用率が○%を下回ったらアラート」というトリガーを設定します。

施策2:段階的な機能開放

全機能を一度に開放するのではなく、利用が定着するにつれて段階的に新しい機能を紹介します。「A機能が定着したら、次はB機能を使ってみましょう」というステップアップの設計です。

施策3:ユーザーコミュニティの活用

同じプロダクトを使う他の顧客との交流の場を提供します。「A社ではこんな使い方をしている」という他社事例は、自社での活用のヒントになります。

施策4:定期的なヘルスチェック

月次〜四半期で、利用状況のレビューを顧客と一緒に行います。「ここが活用できている」「ここはまだ活用余地がある」をデータに基づいて共有し、改善アクションを決めます。

施策5:テックタッチの活用

ハイタッチ/ロータッチ/テックタッチを組み合わせ、アプリ内ガイド、Tipsメール、活用事例の自動配信などで、人手をかけずに利用促進を行います。

利用定着の測定指標

指標定義目標値の目安
DAU/MAU比率日次利用者 ÷ 月次利用者40%以上
コア機能利用率コア機能を利用したユーザーの割合80%以上
データ入力継続率直近4週間連続でデータ入力があるユーザーの割合70%以上
ライセンス稼働率契約ライセンス数に対するアクティブユーザーの割合80%以上

※ DAU(Daily Active Users)は日次アクティブユーザー数、MAU(Monthly Active Users)は月次アクティブユーザー数を指します。

まとめ:利用定着は「プロダクトの問題」ではなく「運用設計の問題」

プロダクトが使われない原因の多くは、プロダクトの機能不足ではなく、業務プロセスへの組み込み不足です。顧客の業務フローに自然に組み込まれる設計を行うことが、利用定着の最も効果的なアプローチです。

明日から始める3つのアクションを提示します。

  1. 担当顧客のコア機能利用率を確認し、50%未満の顧客を特定する
  2. 利用率が低い顧客に対して、業務フローのどこにプロダクトを組み込むかを一緒に設計する
  3. マネージャーの利用状況を確認し、未利用の場合はマネージャー向けの活用提案を行う

利用定着は、圧倒的な商材理解顧客接点設計を武器に、粘り強く取り組むべきCSの中核業務です。

よくある質問

Qプロダクトの利用率が導入3か月後に低下するのはなぜですか?
最も多い原因は、オンボーディング(導入支援)期間中はCSが伴走していたが、完了後に顧客が自走できる状態になっていなかったことです。オンボーディングの『完了条件』を『CSの伴走が終わること』ではなく、『顧客が自走できる状態になること』と再定義し、自走の確認をもって完了とすることが重要です。
Q一部の社員しかプロダクトを使っていない場合の対策は?
対策は3段階です。①使っていない人が使わない理由をヒアリングする(操作が難しい?メリットを感じない?上司が使っていない?)。②理由に応じた対策を打つ(操作の簡易マニュアル提供、活用メリットの説明、上司からの利用促進)。③利用者の成功事例を社内で共有してもらい、未利用者の動機づけを行う。特に上司・マネージャーが使っていないケースでは、マネージャーの利用促進が最優先です。
Q利用定着と解約率の関係はどの程度ありますか?
非常に強い相関があるとされています。一般的に、コア機能の利用率が下がると解約リスクが高まり、逆にコア機能の利用率が高い顧客の解約率は低いことが多いです。利用定着の促進は、最も効果的な解約防止施策と言えます。
渡邊悠介

渡邊悠介

代表取締役 / 株式会社Hibito

株式会社Hibito代表取締役。営業組織コーチング・個人コーチングを通じて、営業パーソンの主体性と成果を最大化する専門家。営業企画×AIによる組織変革とコーチングによる個人の可能性開放を両輪で推進。「全ての人が自分の未来を自分の手で描ける社会」の実現をミッションに掲げる。

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