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タックマンモデル|チームの4フェーズと各段階のマネジメント実践

タックマンモデル(形成期・混乱期・規範期・達成期)を解説。チームの発達段階を正確に診断し、各フェーズで効果的なマネジメントを実践するための具体的な方法を紹介します。

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渡邊悠介


タックマンモデルとは——チームの成長には「順番」がある

結論から言えば、タックマンモデルはすべてのチームが「形成期→混乱期→規範期→達成期」の4段階を経て成熟するという理論であり、各フェーズで異なるマネジメントが求められます。

心理学者ブルース・タックマン(Bruce Tuckman)が1965年に提唱し、1977年に「解散期」を加えてモデルを拡張したこのフレームワークは、今日もチーム開発の基礎理論として世界中で活用されています。

マネージャーにとってこのモデルの最大の価値は「チームの状態を正確に診断し、その段階に合ったアプローチを選べること」です。混乱期のチームに達成期のマネジメント(委任)を行うと機能不全に陥り、達成期のチームに形成期のマネジメント(細かい指示)を行うと自律性が損なわれます。

4つのフェーズの詳細

フェーズ1:形成期(Forming)

特徴:チームが結成されたばかりで、メンバーが互いを探り合っている段階。表面上は穏やかで礼儀正しい。

  • メンバーは役割・目標・期待値を把握しようとしている
  • 上司への依存度が高く、「どうすればいいか」を待つ傾向がある
  • 本音が出ず、表面的な合意が多い
  • 個人のモチベーションは比較的高い(期待感)

マネージャーの役割指示型(Directing)

形成期のチームに最も必要なのは、明確な方向性と構造の提供です:

  • チームのゴール・役割・ルールを明確に定義・共有する(GRPIのG・Rを整える)
  • 一人ひとりと1on1を行い、期待値を双方向で確認する
  • チームの行動規範・意思決定プロセスを設計する
  • 「質問していい」「間違えていい」という安心感を言葉で伝える

チェックポイント:全メンバーがチームの目標・自分の役割・期待されることを自分の言葉で説明できるか?


フェーズ2:混乱期(Storming)

特徴:チームの現実が見え始め、期待とのギャップから対立が生まれる段階。最もマネジメントが難しいフェーズ。

  • メンバー間の意見の対立・摩擦が増える
  • リーダーシップや権限への不満が表面化する
  • 個々のやり方・価値観の違いが顕在化する
  • 生産性が一時的に低下することが多い
  • グループ内でのサブグループ形成が起きやすい

重要な認識:混乱期は失敗ではなく、チームが本物の協働に向かう必要なプロセスです。対立を「なかったこと」にしようとするマネージャーのチームは混乱期が長期化します。

マネージャーの役割コーチ型(Coaching)

  • 対立をオープンに取り扱い、建設的な対話の場を作る(コンフリクトマネジメント
  • 個別1on1で各メンバーのフラストレーションを丁寧に聞く
  • チームの目標・役割の再確認と合意(Goalsのリフレッシュ)
  • 小さな成功体験を意図的に作り、チームの自信を育てる
  • 心理的安全性を高める行動を継続する

やってはいけないこと

  • 対立を強権的に鎮圧する(表面だけ静かになり、関係の質が下がる)
  • 「みんなでうまくやれ」と放置する
  • 強いプレッシャーをかけて表面的な合意を作る

チェックポイント:メンバーが本音で意見を言えているか?対立が表面化しているか?(表面化していない混乱期の方が危険)


フェーズ3:規範期(Norming)

特徴:チームとしての規範・協働のルールが自然に形成される段階。メンバー間の相互理解が深まり、協働が機能し始める。

  • メンバーが互いの強みと弱みを理解し、補い合える
  • チームとしての意思決定ができるようになる
  • フィードバックを受け入れる土壌ができている
  • 「チームとしての意識」が芽生える
  • 生産性が回復・向上する

マネージャーの役割サポート型(Supporting)

  • 自律的な協働を促すため、細かい指示から引く
  • チームのプロセス・ルールをメンバー主導で改善させる
  • 大きな意思決定には関与しつつ、日常業務はメンバーに任せる
  • フィードバック文化の定着を支援する
  • 成長・学習の機会(ストレッチアサインメントなど)を提供する

チェックポイント:チームが自律的に問題を発見・解決できているか?マネージャー不在でも機能するか?


フェーズ4:達成期(Performing)

特徴:チームが高いパフォーマンスを発揮し、複雑な問題も自律的に解決できる成熟段階。

  • チームのミッションに全員がコミットしている
  • 役割・プロセス・関係性がすべて機能している
  • 問題が起きても自律的に解決できる
  • メンバー個々の成長とチームの成果が両立している
  • 革新的なアイデアや改善提案がチームから自然に生まれる

マネージャーの役割委任型(Delegating)

  • ビジョン・方向性の設定に集中する
  • 戦略的な意思決定と外部との橋渡しに注力する
  • 日常業務の意思決定はチームに完全委任する
  • チームメンバーの次のキャリアステップをサポートする(人材開発
  • 新しいチャレンジでチームに適度な刺激を与え続ける

注意点:達成期のチームも放置すれば停滞します。「さらに上を目指す」「新しいチャレンジを与える」という働きかけが必要です。


フェーズ5:解散期(Adjourning)

タックマンが後から追加したフェーズ。プロジェクト終了・組織改編・メンバー転出などでチームが解散するとき、メンバーはさまざまな感情を経験します。この移行を丁寧にマネジメントすることで、次のチームへの良い影響を生みます。

フェーズ診断の実践方法

以下の5つの質問でチームのフェーズを概ね診断できます:

質問形成期混乱期規範期達成期
メンバー間で率直な意見の対立が起きているかほぼない多い建設的自律的に解決
マネージャー不在で機能するか難しい不安定ほぼ可能完全に可能
メンバーが互いの強みを理解しているかあまりない部分的理解している活用できている
チームとして問題解決できるか難しい対立が生じやすいできるスムーズ
メンバーが自発的に改善提案するかほぼない不満として提案として主体的に

チームの退行——達成期から戻ることがある

重要な認識として、タックマンモデルは一方向に進むだけではありません。以下の変化があると、達成期のチームが混乱期に戻ることがあります:

  • 新メンバーの加入(特に役職・影響力が大きい場合)
  • 目標や戦略の大きな変更
  • 外部環境の急激な変化(市場変化・競合の動向)
  • キーパーソンの離脱

退行は恥ずかしいことでも失敗でもなく、チームの変化に対する自然な反応です。マネージャーは「また混乱期のアプローチをとる」と柔軟に対応します。

営業チームへの具体的な適用例

新しい営業チームを結成した場合(形成期)

  • 最初の2週間で個別1on1を全員と実施
  • チームの目標数字と各メンバーの役割・KPIを共有するキックオフMTG
  • 情報共有・報告のルール(日次報告・週次MTGの設計)を明示

目標未達が続くチームで対立が増えている(混乱期)

  • 月2回の1on1でフラストレーションを丁寧に聞く
  • チームMTGで「何が機能していないか」を安心して話せる対話の場を作る
  • 短期的な数字プレッシャーを一時的に緩め、プロセス改善に集中する期間を設ける

GRPIとタックマンモデルの組み合わせ

GRPIフレームワークとタックマンモデルを組み合わせると、各フェーズで何を優先すべきかが明確になります:

  • 形成期:G(目標)とR(役割)の明確化を最優先
  • 混乱期:G(目標の再合意)とP(プロセスの設計)に注力
  • 規範期:P(プロセスの改善)とI(関係性の深化)
  • 達成期:全要素が自律的に機能するよう環境を整える

まとめ:フェーズに合ったマネジメントが最速の成長を生む

タックマンモデルの本質は「チームの成長には順番がある」という事実です。混乱を避けようとせず、各フェーズを丁寧に乗り越えることが、最も速く達成期に到達する道です。

「なぜうちのチームはうまくいかないのか」と悩んでいるマネージャーの多くは、フェーズの診断ができていないか、そのフェーズに合わないマネジメントをしています。まず今日、「自分のチームは今どのフェーズにいるか」を診断することから始めましょう。

参考文献

  • Tuckman, B. W. (1965). Developmental Sequence in Small Groups. Psychological Bulletin, 63(6), 384-399.
  • Tuckman, B. W., & Jensen, M. A. C. (1977). Stages of Small-Group Development Revisited. Group & Organization Studies, 2(4), 419-427.

よくある質問

Qタックマンモデルの各フェーズはどれくらいの期間続きますか?
チームの規模・メンバー構成・環境によって大きく異なります。形成期は数週間〜1ヶ月、混乱期は1〜3ヶ月が多いですが、適切なマネジメントで短縮できます。達成期に到達するまでに通常3〜6ヶ月かかることが多いです。
Q混乱期のチームに対して何をしてはいけませんか?
対立を「なかったこと」にしようとすること、プレッシャーをかけて表面的な合意を強制すること、放置して自然解決を待つことの3つは避けてください。混乱期は対話を通じて乗り越えるものです。
Q今のチームがどのフェーズにいるか判断する方法はありますか?
最も簡単な判断基準は「チーム内で率直な意見の対立が起きているか」です。形成期は表面上は穏やか、混乱期は明示的・暗示的な対立が増え、規範期は建設的な議論ができるようになります。達成期は問題が起きても自律的に解決できます。
Q達成期のチームはマネジメント不要ですか?
不要ではありません。達成期のチームには委任型のマネジメントが適していますが、方向性の設定・環境整備・外部との橋渡し・成長機会の提供はマネージャーの重要な役割として残ります。
渡邊悠介

渡邊悠介

代表取締役 / 株式会社Hibito

株式会社Hibito代表取締役。営業組織コーチング・個人コーチングを通じて、営業パーソンの主体性と成果を最大化する専門家。営業企画×AIによる組織変革とコーチングによる個人の可能性開放を両輪で推進。「全ての人が自分の未来を自分の手で描ける社会」の実現をミッションに掲げる。

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