Championの見極め方|商談を社内で推進してくれるキーパーソン
エンタープライズ営業におけるChampion(推進者)の見極め方と育て方を解説。真のChampionの条件、見極めのポイント、Champion不在時の対策を紹介します。
渡邊悠介
Championの有無が、商談の勝敗を決める
エンタープライズ営業において、社内でソリューション導入を推進してくれるChampion(チャンピオン)の有無は、商談成否を左右する最大の要因です。
MEDDICの6要素の中でも、Championは最も重要な要素の一つとされています。営業がどれほど優れた提案をしても、それを顧客社内で推進してくれる人物がいなければ、提案は机の上に放置されたまま終わります。
Championは「味方」以上の存在です。自ら社内を動かし、障害を排除し、稟議を通す——そこまでの行動力と影響力を持つ人物を見つけ、育てることが、エンタープライズ営業の核心的なスキルです。
真のChampionの3つの条件
条件1:影響力がある
社内の意思決定に影響を与えられるポジションにいることが必要です。
- 部門の予算に関する発言権がある
- 上層部(最終決裁者)にアクセスできる
- 社内での信頼と実績がある
「良い人だが影響力がない」担当者は、Championにはなれません。サポーター(支持者)としては役に立ちますが、商談を前に進める推進力としては不十分です。
条件2:個人的な動機がある
Championには、ソリューション導入に対する個人的な動機が必要です。
- この導入が成功すれば、自分の評価が上がる
- 自分が担当している課題の解決に直結する
- 自分のキャリアにとってプラスになる
組織としてのメリットだけでは、人は積極的に動きません。ステークホルダーの利害整理で述べたように、「個人の利害」を理解することが大切です。
条件3:行動している
最も重要な条件です。真のChampionは、実際に社内で行動を起こしています。
- 社内の関係者にソリューションの情報を共有している
- ステークホルダーとのミーティングをセットしている
- 稟議書の準備を進めている
- 反対者に対して説得活動を行っている
「応援しています」と言うだけで行動しない人は、Championではありません。
Championを見極めるテスト
テスト1:アクション依頼テスト
Championに社内での具体的なアクションを依頼し、実行されるかを確認します。
- 「次回の商談に〇〇部長にも同席いただくことは可能でしょうか?」
- 「弊社の資料を社内の関連部門に共有していただけますか?」
- 「セキュリティ部門との事前打ち合わせを設定いただけますか?」
これらの依頼に対して実際に行動してくれれば、Championの可能性が高いです。
テスト2:社内情報共有テスト
Championは社内の意思決定プロセスに関する情報を積極的に共有してくれます。
- 「稟議のプロセスを教えてくれるか」
- 「反対しそうな人物を教えてくれるか」
- 「意思決定構造や決裁権限を共有してくれるか」
機密情報を無理に聞き出す必要はありませんが、商談を進めるために必要な情報を率直に共有してくれるかどうかは、Championの信頼度の目安になります。
テスト3:逆境テスト
商談に困難が生じた場合のChampionの反応を観察します。
- 予算の問題が出たときに「なんとかする」と動いてくれるか
- 反対者が出てきたときに説得活動を行うか
- スケジュールが遅れたときに社内を催促してくれるか
順調なときは誰でも味方です。困難なときに行動してくれるかどうかが、真のChampionを見極めるポイントです。
Championの育て方
情報武装の支援
Championが社内で説得力のある発言をできるよう、必要な情報を提供します。
- 社内説明用の要約資料
- ROI(投資対効果)の試算データ
- 似た規模・業種の企業での成功事例
- 想定される反論への回答集
Championの社内評価を高める支援
Championの社内評価が上がるような支援を行います。
- 業界のベストプラクティスを共有し、Championが「社内の専門家」になれるよう支援する
- Championが上層部に報告する際の資料を作成支援する
- 導入後の成果をChampionの実績として見えるようにする
定期的なコミュニケーション
Championとは商談の進捗に関係なく、定期的にコミュニケーションを取ります。
- 業界ニュースの共有
- 他社の事例情報の提供
- Championの個人的なキャリアへの関心
Champion不在の場合の対策
Champion候補の探索
現在の商談相手がChampionでない場合、他の候補を探します。
- 商談相手に「この件で社内で最も関心を持っている方はどなたですか?」と聞く
- 組織図を確認し、影響力のあるポジションの人物にアプローチする
- セミナーやイベントに招待し、新たな接点を作る
Champion不在の商談の判断
真剣にChampion探索を行っても見つからない場合、その商談は「確度が低い」と判断すべきです。
パイプラインマネジメントにおいて、Champion不在の案件は「リスク案件」としてマークし、Championが見つかるまで大きなリソースを投入しない判断も必要です。
Championは「パートナー」である
最後に、Championとの関係性について。Championは「こちらの味方」ではなく「対等なパートナー」です。
営業がChampionに提供する価値と、Championが営業に提供する価値が双方向であること——この関係性が長続きする条件です。一方的に利用するのではなく、Championの成功を心から支援する姿勢が、エンタープライズセールスにおける最強のパートナーシップを生み出します。
よくある質問
- Q好意的な担当者とChampionの違いは何ですか?
- 好意的な担当者は自社のソリューションに好感を持っていますが、社内で積極的に推進する行動は取りません。一方、Championは自ら社内の関係者を説得し、稟議を通す活動を行います。違いを見極めるテストは「Championに社内でのアクション(ミーティングの設定・資料の共有・上層部への説明など)を依頼したとき、実際に行動するかどうか」です。
- QChampion候補が複数いる場合はどうすべきですか?
- 複数のChampion候補がいる場合は、社内での影響力が最も高い人物をメインのChampionとして位置づけ、他の候補はサポーターとして活用します。ただしメインのChampionに依存しすぎるのはリスクがあるため(異動・退職のリスク)、複数の支持者を育てておくことが安全策です。
- QChampionが途中で異動した場合の対処法は?
- Championの異動は商談における最大級のリスクです。まず後任者に速やかにアプローチし、ゼロから関係構築を始めます。同時に、異動したChampionの異動先でも新たなビジネス機会が生まれる可能性があるため、関係を維持してください。日頃から複数のサポーターを育てておくことが、このリスクへの最善の備えです。
渡邊悠介
代表取締役 / 株式会社Hibito
株式会社Hibito代表取締役。営業組織コーチング・個人コーチングを通じて、営業パーソンの主体性と成果を最大化する専門家。営業企画×AIによる組織変革とコーチングによる個人の可能性開放を両輪で推進。「全ての人が自分の未来を自分の手で描ける社会」の実現をミッションに掲げる。
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